8月のセミナーのお知らせ
硬性鏡を用いた外耳炎治療
耳科 高村文子
外耳炎は様々な原因によって起こりますが、治療で大事なことは耳道内をきれいに洗浄することです。ただ、通常の診察室内での耳道洗浄は動物の協力が得られない限り、なかなか鼓膜付近まで洗浄することが出来ません。というのも、犬の外耳道は構造的に垂直耳道と水平耳道に分かれてL字型になっているので、なかなか奥まで届かないのです。
そこで、用いるのが硬性鏡です。硬性鏡は硬い内視鏡のようなもので、耳の奥までモニターに映すことができます。横についた鉗子孔から鉗子を入れれば、耳の奥にできた腫瘤の一部を取って病理検査に出したり、異物(ノギなど)を除去したりできます。レーザーを入れれば、腫瘤を焼絡することもできます。これが一番のメリットですが、チューブを入れれば、鼓膜付近まできれいに洗浄することができます。デメリットは、麻酔下でないと完全な処置ができないところでしょうか。
外耳炎がなかなか良くならなくて困っている飼い主さんは多いと思います。その難治性外耳炎がなぜ起こっているのかという原因を突き止め、徹底的な洗浄をし、適切な治療法を見つけるためにも、硬性鏡を用いる価値は大いにあります。
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今回の症例は、ノギが外耳道の奥に入り込んでしまったため、なかなか外耳炎が治らなかった犬です。ノギとは、イネ科の植物にみられる棘状の突起のことで、その形から、一回入り込んでしまうと自然に排出されるのは難しいのです。この症例は、麻酔下で硬性鏡を用いて、左右の外耳道から一つずつ異物であるノギを摘出し、徹底的に洗浄しました。この処置により、外耳炎は良好にコントロールできています。もともとアレルギー性の外耳炎持ちだったので、治療は継続していますが、1~2カ月に1回程度通院での耳道洗浄のみで維持できています。
写真1:硬性鏡
写真2:症例の耳道内の様子
写真3:ノギ
WJVF ( West Japan Veterinary Forum ) 第9回大会に参加しました
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今回の学会では犬猫の肺水腫に関する講演に加え、腎不全に関する講演を聞いてきました。
心臓疾患が原因の肺水腫治療には利尿剤が欠かせません。肺が水浸しで呼吸困難をおこし、まさに命に関わる状態になるのが肺水腫です。ですが、利尿剤の使用は腎臓に負担をかけてしまいます。
いかに腎臓への負担を最小限にしつつ肺から水を抜くか、ギリギリの戦いをすることになります。
これまでの診断治療方法を覆す様な目新しい内容ではありませんでしたが、改めて肺水腫の緊急時の対応と腎不全を見直すきっかけになりました。
肺水腫を起こす可能性の高い疾患に僧帽弁閉鎖不全症がありますが、この疾患はチワワなどの小型犬によく見られます。講師の先生のお話の中で、肺水腫を発症するきっかけで意外と多いものに、「高塩分食の摂取」があるそうです。もしお家のワンちゃんがこの病気でしたら、人の食べ物、特に味のついたものにはどうか気をつけてください。(もちろん、この病気の子でなくても人の食べ物の多くは犬や猫の健康上よくないものが多いので与えるべきではありませんが)
ねだられるとつい、「ちょっとなら・・・」と与えてしまいがちですが、本当にちょっとでも肺水腫を誘発することがあるとのこと。ほんの一刻の喜びが、命に関わる重大な事態になりうることを心に留めて置いていただければと思います。
阿部素子
今回のがん学会のメインテーマは「犬の鼻腔腫瘍」です。