歯石について
歯科 高村文子
ペットが年を取ると、お口のにおいが気になってきませんか?それは、歯に付着した歯垢や歯石のせいかもしれません。
今回の症例は、鼻水とくしゃみの原因が歯科疾患であった犬です。デンタルケアが不十分だったために歯石が歯全体に付着してしまいました。特に犬歯に重度に歯石が付着していまい、歯根(歯の骨に埋もれている部分)へと感染が広がり、周囲の骨を溶かしてしまいました。その結果、鼻の骨も溶けてしまい、犬歯の歯根と鼻が貫通して(口鼻腔瘻といいます)、感染が鼻腔内にまで及び、くしゃみや鼻水が出てしまったのです。こうなると、抗生物質はその場しのぎの治療で、根本的な治療は抜歯になります。
歯全体に重度の歯石が付着
犬歯の抜歯はすでにグラグラしている場合を除いて、困難な処置になります。犬歯の周囲の骨をドリルで削り抜歯した後、骨の表面をきれいに整えてから歯肉を切開したりスリットをいれたりして、抜歯したところを覆うように縫合します。
➝
左上顎犬歯を抜歯したところ 抜歯窩を歯肉で覆い縫合したところ
今回の症例もそうでしたが、歯の外側(唇をめくって見える面)より歯の内側の歯石が重度で歯周ポケットが深いケースはよくあります。デンタルケアをしているつもりでも歯の内側まではしっかり磨けていないことが多いからです。
左上顎犬歯の内側の深い歯周ポケット
子犬のころから、デンタルケアをすることによってこの症例のような状態にはならずに済みます。しっかりデンタルケアをして、健康な歯を維持していきましょう。
次回は詳しくデンタルケアについて紹介していこうと思いますが、早く知りたい!という方は、当院の獣医師もしくは看護師に気軽におたずねください。