獣医師コラム

犬の拾い食い|飼い主様が知っておくべきリスクと対策

犬の飼い主様ならきっと一度は直面するであろう問題、それが「拾い食い」です。

散歩中や家の中で、愛犬が何気なく地面に落ちているものを口にしてしまう行動は、生まれつきの好奇心や探究心からくるものですが、消化器系のトラブルや中毒、寄生虫感染、アレルギー反応といった、さまざまな健康上のリスクを招くこともあります。

 

この記事では、犬が拾い食いをしてしまう理由、その危険性、対処法を解説します。

 

 

 

■目次
1.拾い食いをしてしまう理由
2.拾い食いによるリスク
3.拾い食いをすると特に危険なもの
4.拾い食いをしてしまった場合の対処
5.拾い食いをしたときの病院の処置方法
6.ご家庭でできる対策
7.まとめ

 

拾い食いをしてしまう理由

犬が拾い食いをする背景には、好奇心旺盛な性格と、食べ物を探すという本能があります。また、食べ物以外のものにも興味を示し、口に咥えて確認しようとします。

特に若い犬や子犬は探究心が強く、何でも口にしてしまうことが多く、この行動は生後6ヶ月から3歳までの間に顕著に見られます。

この期間は、犬の社会化や環境への適応が進む大切な時期であり、拾い食いの癖がつきやすい時期とも言えます。

 

しかし、この傾向は若い犬に特に見られるものの、年齢に関係なく拾い食いをする犬はいます。食べ物への執着心が強く、エネルギー消費が激しい犬では、年齢を問わずに拾い食いの行動を示すことがあります。

 

拾い食いによるリスク

<消化器系の問題>

犬が不適切なものを食べてしまうと、消化不良や腸閉塞といった消化器系の問題を引き起こすリスクがあります。特に骨やプラスチック片、ゴム製のおもちゃなど、消化できない硬い物質を飲み込んだ場合、消化器官を傷つけるなど重大な問題に繋がることがあります。

 

<中毒>

家庭内で使用される化学製品や殺鼠剤、そして犬にとって有害な植物も、拾い食いの習慣からくるリスクの一つです。人間の食べ物の中にも、チョコレートや玉ねぎのように犬にとって危険なものが含まれていることがあります。これらを摂取してしまった場合、嘔吐や下痢を引き起こすことがあるほか、より重篤な状況では昏睡や最悪の場合死に至ることもあります。

 

<寄生虫感染症>

地面や草むらには、犬に寄生虫感染症を引き起こす可能性のある卵や幼虫が潜んでいることがあります。愛犬がこれらを口にしてしまうと、寄生虫に感染するリスクを高めるだけでなく、これらの寄生虫は犬の健康を害し、時には人間にも感染する可能性があるため、より一層の注意が必要です。

 

人獣共通感染症についてはこちらから

 

<アレルギー反応>

犬がアレルギーを持つ食材を口にしてしまうと、皮膚のかゆみや発疹といった軽度の症状から、場合によっては呼吸困難を伴うような重篤な反応を引き起こす可能性があります。

 

愛犬の健康と安全を守るためには、これらのリスクをできるだけ減らすよう、日頃からの注意が必要です。

 

拾い食いをすると特に危険なもの

殺鼠剤や除草剤:犬にとって特に危険であり、中毒症状を引き起こす可能性があります。これらの物質は犬の神経系に重大な影響を及ぼし、けいれんや意識の混濁といった深刻な症状を引き起こすことがあります。最悪の場合、命を脅かす可能性もあります。

 

チョコレートやカフェインを含む食品カカオに含まれるテオブロミンやカフェインは犬にとって毒性があり、嘔吐、下痢、過剰な興奮、不整脈などを引き起こすことがあります。状況が悪化すると、震え、頻脈、けいれんが生じ、最悪の場合は死に至るケースもあります。

 

玉ねぎやニンニクネギ類を食べてしまうと、その中に含まれる有機化合物が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こす可能性があります。さらに、呼吸困難、血色素尿、黄疸などの症状が現れることがあります。

 

骨や大きな塊の肉消化器官や内臓を傷つけたり、喉に詰まらせたりするリスクがあります。

 

ゴミや腐敗した食品バクテリアやカビが犬の健康を害する可能性があります。

 

食糞やしつけについてはこちらから

 

拾い食いをしてしまった場合の対処

<何をどれくらい食べたか確認する>

犬が何かを食べてしまった際、その体重と摂取量を正確に知ることは、中毒の重篤度を判断する上で欠かせません。

一般的に何かを過剰に摂取した場合、中毒症状を引き起こす可能性がありますので、愛犬の様子がおかしいと感じたら、大量に食べたものがないかを確認することが大切です。

 

さらに、愛犬が食べたものが何であったか、その破片や吐き戻したものがあれば、それらを動物病院に持っていくことをお勧めします。これにより、獣医師はより迅速かつ正確に診断を下し、適切な治療が行えます。

 

<すぐ動物病院に相談する>

犬が誤飲誤食をしてしまった場合、できるだけ早く動物病院に連絡し、獣医師からの指示を仰ぐことが大切です。

獣医師に伝えることは、摂取したもの、その時刻、食べた量の3つの情報が特に重要です。

 

また、愛犬の様子に何か異変が見られる場合は、その詳細を正確に伝えることが診察に役立ちます。言葉で状況を伝えるのが難しいときは、愛犬の様子を動画や写真で撮影し、それを獣医師に見せると良いでしょう。

 

<自己判断で吐かせようとしない>

愛犬が何かを誤食してしまい中毒症状が見られたら、「とにかく食べたものを吐かせよう」と考える飼い主様もいらっしゃると思います。

しかし、獣医師の判断なしに自宅で吐かせようとすることは非常に危険です

 

無理やり吐かせようとする行為が気管を詰まらせて、愛犬の命を危険にさらすことがあります。

飲み込んだ物質や現れている症状によっては、催吐がかえって状況を悪化させることもあるため、絶対に自己判断で吐かせようとしないでください

 

拾い食いをしたときの病院の処置方法

犬が拾い食いをしてしまった場合の対応は、まず飼い主様から「何を」「いつ」「どのくらい食べたか」についての情報を聞き取ります。

続いて、レントゲン検査で飲み込んでしまったものが胃に残っているか、消化管に詰まっていないかを確認します。

血液検査では中毒の影響を評価し、犬の全体的な健康状態を把握します。

 

獣医師が安全と判断した場合、特定の薬剤を使用して犬を吐かせることがあります。これは、摂取してから時間があまり経過していない場合に有効です。

また、吸収されていない毒素を吸着させて、体外へ排出させるために活性炭が使用されることもあります。

脱水や栄養失調を防ぐために、点滴による補液や栄養補給が行われることがあります。

 

場合によっては、胃の中に残ったものを取り除くために内視鏡を使用することもありますが、これは全身麻酔が必要となるため、そのリスクと利益を十分に考慮した上で行われます。

内視鏡で取り除けない大きな物質や、飲み込んだものが腸に損傷を与えている場合は、開腹手術が必要になることがあります。

 

ご家庭でできる対策

拾い食いの習慣を防ぐためには、しっかりとしたしつけがとても重要になります。家庭内でのトレーニングを通じて、「待て」「よし」「離す」といったコマンドの使い方を徹底することが、非常に効果的です。

特に、おやつや食事の時間にこれらのコマンドを活用することで、犬は我慢することを覚えていきます。

最初は「待て」を守る時間が短くても大丈夫です。根気強く続けることによって、徐々に我慢する時間を伸ばしていきましょう。

こうした訓練は、できるだけ子犬の頃から始めるのがベストです。

 

さらに、食べ物や危険なものを犬の届く場所に置かないように心がけることも大切です。

 

まとめ

愛犬の健康と安全を守るためには、環境の管理、基本的なトレーニングが欠かせません。愛犬が何かを口にした際には、飼い主様の迅速な対応がとても重要となります。

これらの対策を日常生活に取り入れ、愛犬を危険から守りましょう。

 

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