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獣医師コラム

猫の喘息・気管支炎の症状と生活での注意点|アレルギーが原因の呼吸器疾患を獣医師が解説

猫が咳をしていると「風邪かな?」と思われる飼い主様も多いかと思いますが、その咳の背後には、アレルギーが原因の慢性気管支炎や喘息が潜んでいることがあります。

 

咳が悪化してからレントゲン検査で気管支炎などの病気が発見されるケースも少なくありませんが、これらの呼吸器疾患は、早期に適切な対応をすることで、症状の進行を防ぐことができます。

 

今回は、猫の喘息や気管支炎の症状、原因、診断方法、治療法、そして飼い主様が日常生活でできる予防策について、詳しく解説します。

 

 

■目次
1.猫の喘息とは?
2.こんな症状に注意!軽症から重症までの変化
3.原因となるアレルゲンと生活環境の改善
4.診断の流れと検査でわかること
5.治療の選択肢と当院での取り組み
6.まとめ|「軽い咳」でも早めの受診と環境改善を

 

猫の喘息とは?

猫の喘息(猫喘息)は、ハウスダストや花粉、タバコの煙、芳香剤などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対する過敏な反応が原因で、気道に炎症が起こり、咳や呼吸困難などの症状を引き起こす病気です。

 

この病気は、軽度の気管支炎から始まり、慢性気管支炎を経て、重篤な喘息へと進行することがあります。重度の喘息になると、呼吸困難やチアノーゼ(粘膜や皮膚が青紫色になる状態)を引き起こし、緊急の処置が必要になることもあります。そのため、早期の発見と対応が非常に重要です。

 

こんな症状に注意!軽症から重症までの変化

猫の喘息や気管支炎の症状は、進行度によって異なります。以下が症状の段階別の特徴です。

 

初期症状

これらの症状は、猫風邪と似ているため、見過ごされがちです。

 

軽い咳

・喉の違和感から舌なめずりをする

咳をするような仕草をするが、実際には咳が出ない

 

慢性気管支炎

炎症が長期間続くことで、気道が狭くなり、健康な状態に戻ることが難しくなる場合があります。

 

咳が長引く

・呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音がする(喘鳴)

活動量の低下

 

重度の症状

次のような症状が見られた場合は、命に関わるおそれがあるため、すぐに動物病院を受診してください

 

口を開けて呼吸する(開口呼吸)

舌や唇が青紫色になる(チアノーゼ)

ふらつきや転倒

 

日頃から愛猫の様子を観察し、咳や呼吸の変化に気づいたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

 

原因となるアレルゲンと生活環境の改善

猫の喘息や気管支炎の発症には、さまざまなアレルゲン(アレルギーの原因物質)が関わっています。猫の咳や呼吸器トラブルを防ぐには、生活環境を見直し、アレルゲンへの接触をできる限り減らすことが大切です。

 

主なアレルゲン

・タバコの煙

・芳香剤や消臭スプレー

・ヘアスプレー

・ハウスダスト(ほこり)

・カビ

・猫砂の粉塵

 

生活環境の改善策

猫は人間よりも鼻が敏感で、ごくわずかな刺激にも反応してしまうことがあります。

 

▼アレルゲンへの配慮

室内での喫煙は避ける

・芳香剤や消臭スプレー、ヘアスプレーなど、香りの強い製品の使用を控える

猫砂は粉塵が少ないタイプを選ぶ

 

▼環境を清潔に保つ

こまめな掃除でホコリやカビを取り除く(特に猫の生活スペース)

・ホコリがたまりやすい素材のものは定期的に洗濯

空気清浄機の導入で、空気中のアレルゲンを減らす

 

▼ストレスをためない暮らし

静かで落ち着ける空間を用意してあげる

・急な模様替えや大きな音など、環境の急変に配慮する

愛猫のペースを尊重し、無理のない関わり方を心がける

 

このような毎日のちょっとした配慮が、愛猫の呼吸器への負担を軽くし、症状の予防や緩和につながります。軽い咳も「いつものこと」と思わず、生活環境の改善とあわせて早めに動物病院に相談しましょう

 

診断の流れと検査でわかること

猫の喘息や気管支炎の診断には、以下のような検査が行われます。

 

問診と聴診:飼い主様から症状や生活環境について詳しく聞き取り、呼吸音を確認します。

血液検査:炎症やアレルギー反応の有無を調べます。

X線検査(レントゲン):肺や気管支の状態を確認します。

気管支鏡検査:内視鏡を使って気道内を直接観察します。

気管支肺胞洗浄検査:気管支に生理食塩水を注入し、回収した液体を分析します。

 

気管支鏡検査や気管支肺胞洗浄検査は、全身麻酔が必要なため、症状や猫の状態に応じて実施されます。

 

治療の選択肢と当院での取り組み

猫の喘息や気管支炎の治療は、主に以下の方法で行われます。

 

薬物療法

抗炎症薬(ステロイド):気道の炎症を抑えます。

気管支拡張薬:気道を広げて呼吸を楽にします。

抗生物質:感染症が原因の場合に使用されます。

 

これらの薬は、内服薬や吸入薬として使用され、症状や猫の状態に応じて処方されます。

 

吸入療法(ネブライザー)

吸入療法は、薬剤を霧状にして吸入させる方法で、気道に直接作用し、炎症を抑える効果があります。全身への影響が少なく、副作用を抑えやすい点がメリットです。

当院では、吸入療法にも対応しております

 

治療は継続的な管理が必要であり、症状が改善しても、飼い主様の判断で治療を中断しないように注意してください。

 

まとめ|「軽い咳」でも早めの受診と環境改善を

猫の咳は「よくあること」と見過ごされがちですが、実はアレルギーが関係する喘息や慢性気管支炎の初期サインであることも少なくありません。

 

たとえ軽度であっても、咳を見過ごさずに早期に原因を探ることが重要です。そのうえで適切な治療と環境改善を行えば、重症化を防げる可能性がぐっと高まります。特にアレルゲンの除去や清潔な環境づくりは、治療と同じくらい大切な重症化予防の一歩です。

 

吉田動物病院では、症状の診療だけでなく、生活環境の整え方や日常でのケア方法についても丁寧にアドバイスしています。「ちょっと咳が気になる」「これってアレルギーかも?」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

TEL:0766-52-1517

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