【獣医師監修】愛犬の誤飲誤食を防ぐ対策とは?盗み食いのリスクと予防法を解説
「気づいたら愛犬が何かを飲み込んでいた…」そんな経験をされた飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
犬の誤飲誤食は、一瞬の不注意から起こりうるトラブルで、時には命に関わる深刻な事態を招くこともあります。特に、飼い主様が目を離した隙に起きることが多く、「まさかこんなものを…」と思うような物が対象になることも少なくありません。
愛犬が安全に暮らせる環境を整えるためには、日頃から誤飲誤食を防ぐ対策を意識することが大切です。
今回は、犬が誤飲誤食をしてしまう理由や注意すべき危険物、具体的な予防法について詳しく解説いたします。
■目次
1.犬が誤飲してしまう原因とは?
2.犬が飲み込むと危険な食べ物と異物
3.家の中でできる安全対策
4.食事のしつけと管理方法
5.誤飲誤食が起きてしまったら
6.まとめ
犬が誤飲してしまう原因とは?
犬が誤飲誤食をしてしまう背景には、犬の本能的な習性や日常生活での環境要因が関係しています。
犬の本能的な行動と食への関心
犬は、狩猟本能の名残から、目の前の物を「食べられるかどうか」試す習性があります。特に匂いが強い物や動く物に対して強い興味を示し、たとえ食べられない物でも口に入れてしまうことがあります。
飼い主様の日常行動を観察している
愛犬は、飼い主様の行動をよく見ています。キッチンで食材を扱っている様子やテーブルに置かれた食べ物などに敏感で、飼い主様が目を離した瞬間に「今がチャンス」と判断して行動することがあります。
特に注意が必要な場面
日常の中で飼い主様が少し気を緩めた瞬間に、誤飲誤食が発生することがあります。
・来客時やパーティー中
来客が多い場面では注意が分散し、落ちた食べ物や誤って置かれた危険物を飲み込むリスクが高まります。また、お正月やクリスマスなどのイベント時期は、おいしい食事が食卓を彩る一方で、愛犬にとっては思わぬ危険が潜んでいるので特に注意が必要です。
・調理中のキッチン
落とした食材を瞬時に食べてしまうケースも珍しくありません。
・散歩中
外での拾い食いも忘れてはいけないリスクの一つです。
犬が飲み込むと危険な食べ物と異物
犬にとって危険な食べ物や異物は、私たちの身近な場所に多く存在します。
危険な食べ物
私たちの身近にある食品の中には、犬にとって有害な成分が含まれているものが少なくありません。
・チョコレート
チョコレートに含まれるテオブロミンは犬の体内で分解されにくく、中毒症状を引き起こす成分です。嘔吐や下痢、重篤な場合には心不全を引き起こすリスクがあります。
・玉ねぎやネギ類
玉ねぎやネギ類には、犬の赤血球を破壊する成分が含まれており、これにより貧血や呼吸困難が引き起こされることがあります。調理されたものでも毒性は失われないため、スープやハンバーグの具材などにも注意が必要です。
・ブドウやレーズン
ブドウやレーズンは、犬にとって非常に危険な食品です。腎不全を引き起こすリスクがあり、個体差はあるものの、少量でも中毒症状を引き起こす可能性があります。パンやお菓子に含まれるレーズンにも注意が必要です。
異物の危険性
日用品や食材の包装材など、犬の健康に深刻な影響を与える異物は意外と身近にあります。
・串や爪楊枝
串や爪楊枝のような鋭利な異物は、犬の口腔内や消化管を傷つけるリスクが高く、ほとんどの場合で外科手術が必要です。焼き鳥の串などを置きっぱなしにしないことが重要です。
・ビニールやアルミホイル
食材の包装材として使用されるビニール袋やアルミホイルは、腸閉塞や窒息の原因となることがあります。特に油や食材の匂いが付着しているものは、犬の興味を引きやすいので注意が必要です。
調理中やイベント時の注意点
調理中に、生肉や骨、油を含んだ食品などの犬にとって有害な食材を落とした際に、犬がすぐに食べてしまうケースが多くみられます。
また、糖分や塩分を多く含む、黒豆やかまぼこ、昆布巻きなどの正月料理は、犬に適さないものが多いため、絶対に食べさせないようにしてください。バレンタインもチョコレートや包装紙・リボンなどの誤飲誤食に要注意です。
家の中でできる安全対策
誤飲誤食を防ぐためには、室内環境の工夫が欠かせません。日頃から簡単に取り入れられる予防策についてご説明します。
キッチンやダイニングの安全管理
食材や調理器具をすぐに片付け、犬が届かない場所に保管します。調理中は別室で待機させるのも有効です。
食事中に席を立つ際は、食卓の食べ物を片付けるか、犬をサークルやケージに入れるなどします。食後は食器をすぐに洗うか、犬が届かない場所に移動させるようにしましょう。
また、食品の保管には密閉容器を活用したり、食品棚や冷蔵庫の下段に犬が開けられないようにロックを設けたりすると安心です。
ゴミ箱の管理
犬が開けられないように、フタがしっかり閉まるタイプのゴミ箱を使用します。犬が届かない高さに置くことや、犬が入れない部屋に移動させることも検討しましょう。また、匂いを感じると犬が興味を持ちやすいので、匂いが漏れないよう密閉できる袋を使用してください。
来客時の配慮
来客が持参した食品やお菓子は犬が届かない場所に置き、袋や箱を放置しないように気をつけましょう。もしくは別の部屋で休ませたり、サークルやケージを活用するなどして安全を確保します。来客にも、犬に人間の食べ物を与えたり、犬が届く場所に誤飲誤食のリスクがあるものを放置したりしないように事前に伝えておくと安心です。
食事のしつけと管理方法
愛犬の誤飲誤食を防ぐためには、日常の食事管理と適切なしつけが欠かせません。ここでは、基本的な食事のルールや管理方法をご紹介します。
基本的な食事のルールづくり
食事を与える前に「待て」の指示を守らせることで、飼い主様の指示を守る習慣を身につけさせましょう。また、匂いが強い食品やテーブルの食べ物に近づこうとした際には、「ダメ」と伝えて、食べてはいけないものを認識させることが大切です。
正しい食事の与え方やタイミング
決まった時間に食事を与えることで、生活リズムを整え、空腹による盗み食いを減らすことができます。
おやつの与え方
おやつは日常的に与えるのではなく、しつけや特別なご褒美として与えることで、間食の習慣を防ぎます。また、人間の食品は犬にとって有害な場合があるため避け、犬用の安全なおやつを選びましょう。
人間の食事中の管理方法
飼い主様の食事中は犬をサークルやケージに入れることで、盗み食いのリスクを減らせます。
犬が近くにいるとテーブルに飛びつく可能性があるため、別室で過ごさせるのも有効な手段です。飼い主様が食事中に人間の食べ物を与えると、「人間の食事=もらえるもの」と誤解し、盗み食いの原因になります。愛犬の健康のためにも絶対に与えないようにしましょう。
誤飲誤食が起きてしまったら
愛犬が誤飲誤食をしてしまった場合、状況によっては早急な対応が必要です。特に以下のようなケースでは、速やかにかかりつけの獣医師に判断を仰ぎましょう。すでに嘔吐、元気の低下、呼吸困難などの症状がみられる場合は一刻を争うことがほとんどです。
・毒性のある食材を飲み込んだ場合
チョコレート、玉ねぎ、ブドウ、アルコール、キシリトール入りガムなど、犬にとって有害な物質を摂取した場合は即時対応が必要です。
・鋭利な異物を飲み込んだ場合
串、爪楊枝、破片状のプラスチックなど、消化器官を傷つけるリスクがある物を飲み込んだ際は、特に注意が必要です。
・大量の異物を飲み込んだ場合
一度にたくさんの異物を飲み込んだ場合は、腸閉塞を引き起こすことがあるため、早急な診察が求められます。
ただし、異物が小さくて柔らかい場合でも、自己判断で様子を見るのは避けましょう。飲み込んだ物が内臓に負担をかける可能性があり、問題が深刻化するリスクがあります。どのような場合でも、迷わず動物病院に連絡してください。
確認すべきこと
誤飲誤食が疑われる場合、まず以下の点を確認してください。
・何をどれだけ飲み込んだか
誤飲した物の種類や量、形状を特定します。
また、飲み込んだ時刻が分かれば記録しておきましょう。
・症状の有無
嘔吐、ぐったりしている様子、呼吸困難などが見られないか確認してください。
応急処置の注意点
無理に吐かせる行為は控えましょう。特に、危険な形状の異物や化学薬品の場合、吐かせることで症状を悪化させるおそれがあります。できるだけ犬を安静にさせ、可能であれば、誤飲した物の包装や残りを持参して受診の準備を進めてください。
動物病院に伝える情報
動物病院では以下のような情報を伝えると、スムーズな診察に繋がります。
・飲み込んだ物の種類と量
・飲み込んだ時刻
・愛犬の現在の状態
・持病の有無や服薬中の薬の情報
まとめ
愛犬の誤飲誤食を防ぐには、飼い主様が日々の生活の中で小さな注意を積み重ねることが大切です。
調理時や食事中の行動を見直したり、室内環境を整えることで、トラブルを回避できる可能性が高まります。日常的に愛犬の行動に目を配りながら、万が一、誤飲が疑われる場合は、落ち着いて状況を確認し、すぐに動物病院に相談しましょう。
当院では、愛犬の健康を守るためのサポートを全力で行っています。「どうすれば良いのかわからない」といったお悩みがある際にも、どうぞお気軽にご相談ください。
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