「胃捻転・胃拡張症候群」は、特に大型犬や特定の犬種で発生しやすい消化器疾患のひとつです。発症から数時間で命を落とす危険性もあるため早急な対応が必要となりますが、日頃からのケアや知識を身につけることで予防や早期発見につなげることが可能です。

 

今回は、胃捻転・胃拡張症候群とはどのような病気なのか、原因や発症しやすい犬の特徴、そして知っておくべき症状や予防法について詳しく解説します。

 

 

■目次
1.胃捻転・胃拡張症候群とは？
2.どんな犬がなりやすい？
3.早期発見のために
4.予防するために～日常生活での注意点～
5.もしも症状が出たら
6.まとめ

 

胃捻転・胃拡張症候群とは？

胃捻転・胃拡張症候群は、胃が過剰に膨らむ「胃拡張」と、その状態で胃がねじれてしまう「胃捻転」が同時に起こる疾患です。この2つの症状は別々に発生する場合もありますが、多くの場合は連動して起こります。この疾患は短時間で命に関わる緊急事態となるため、迅速な対応が必要です。

 

胃の正常な状態と異常の進行

通常、胃は食べ物や水を一時的に蓄える柔軟な臓器ですが、過剰に膨らむと（胃拡張）、周囲の臓器や血管を圧迫し、心臓や肺にも大きな負担がかかります。

 

これが進行して胃がねじれると（胃捻転）、胃の血流が遮断され、胃壁が壊死するだけでなく、全身に深刻なショック状態を引き起こします。胃捻転が発生した場合、早急な手術をしなければ命を落とす危険性が極めて高いです。

 

どんな犬がなりやすい？

大型犬や胸の深い犬種

大型犬や胸が深く幅の狭い体型の犬種は、胃が広がりやすく、ねじれやすい傾向があります。

グレートデーン、ジャーマンシェパード、スタンダードプードル、ボルゾイ、セントバーナードなどが特にリスクが高いとされている犬種です。

 

年齢

食欲旺盛な成犬や、胃を支える筋肉や靭帯が弱くなる7〜8歳以上の高齢犬でリスクが高まります。

 

食事の取り方

一度に大量の食事を摂取する、早食いをする、食後すぐに激しい運動をするなどの習慣が、胃拡張や胃捻転を引き起こす危険性を高めます。

 

小型犬にも注意

小型犬はリスクが低いとされますが、絶対に起こらないわけではありません。全ての犬において注意が必要です。

 

早期発見のために

胃捻転・胃拡張症候群は、進行が非常に早い疾患です。初期症状を見逃さず、迅速に対応することが命を救う鍵となるので、段階的に症状を説明します。

 

初期症状

・お腹が張っている、または膨らんでいるように見える

・舌を頻繁に出したり、口を気にするような仕草を見せる

・よだれをたらす

・嘔吐しようとするが、ほとんど何も吐き出せない（空嘔吐）

・落ち着きがなく、歩き回る

 

中期症状

・呼吸が速くなる

・ぐったりして力がなくなる

・お腹を触ると痛がる、または触らせない

・心拍数の上昇（触れると鼓動が速く感じる）

 

重症化した場合

・四肢が冷たい、歯茎が白っぽい（ショック症状）

・失神や意識が薄れた状態

・完全に動かなくなる

 

「いつもと違う」と感じたときには、迷わず動物病院に相談することが大切です。

 

予防するために～日常生活での注意点～

胃捻転・胃拡張症候群は、一度発症すると短時間で進行するため、完全に治療するには緊急手術が必要になります。手術にはリスクも伴うため、発症そのものを予防することが最善策です。日常生活での小さな工夫が、愛犬の命を守る大きな手助けとなります。

 

食事と運動の管理

1日の食事量を2～3回に分けることで胃の急激な膨張を防ぎます。水を一気に飲むことも胃拡張の原因になるため、散歩の後などに水を飲ませる場合も少しずつ与えるようにしましょう。また、食後すぐの運動は胃がねじれるリスクを高めるため、食前後1時間は激しい運動を避けるようにしましょう。

 

食器や食べ方の工夫

高さのある食器は胃捻転のリスクが高まるため、地面に近い低い位置で食べられる食器を使用し、胃への負担を軽減します。胃拡張のリスクを高める空気の飲み込みを減らすため、早食い防止食器などを活用することも一案です。

 

日常的な観察

お腹の張り、嘔吐の有無や普段の様子をこまめにチェックする習慣をつけましょう。飼い主様が日頃から愛犬の行動や状態をよく理解しておくことが、早期発見の大きな助けになります。

 

もしも症状が出たら

胃捻転・胃拡張症候群は命に直結する緊急性の高い疾患です。初期症状がみられたら、一刻も早く対応することが必要です。

 

動物病院への緊急連絡

症状に気付いたら、まずかかりつけの動物病院に緊急連絡をしてください。夜間や休日の場合は、近隣の夜間動物病院や救急対応可能な施設を確認し、直ちに受診の準備をしましょう。連絡時には、症状の詳細、発症時間や状況（食事後、運動後など）、愛犬状態を伝えるとスムーズです。

 

移動時の注意点

胃捻転が起きている場合、激しい揺れやストレスが症状を悪化させるおそれがあります。

愛犬をできるだけ静かに落ち着かせた状態で移動しましょう。また、横倒しではなく、自然な伏せの姿勢で体を支えると胃の負担が軽減することがあります。

 

応急処置の注意点

胃捻転・胃拡張症候群はご自宅で対処することは不可能ですが、応急処置として、胃への負担を避けるため水や食事を与えないようにしましょう。また、ショック状態を防ぐために、毛布などで体を温めるようにします。ただし、過度の加温は避けてください。

 

まとめ

胃捻転・胃拡張症候群は、愛犬の命に直結する非常に危険な疾患です。普段から食事や運動の管理を徹底し、日常的な観察を習慣づけることで予防に努めましょう。

 

また、緊急時の対処法や、かかりつけ病院・夜間施設の情報を事前に準備しておくことで、大切な愛犬の命を守るために最善の行動が取れるようになります。

そして「いつもと違う」と感じたら迷わず動物病院に相談してください。

 

 

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