獣医師コラム

犬と猫のてんかんについて|痙攣や意識障害が見られる

てんかんは、脳の細胞に異常な電気的興奮が起こることで、痙攣や意識障害などのてんかん発作が引き起こされる神経疾患です。
犬や猫の神経疾患の中では最も多い病気であり、発作は何の前触れもなく突然起こるため、初めて見る飼い主様はパニックになってしまうことも少なくありません。

 

今回は、犬と猫のてんかんの原因や症状、治療法、気を付けたいことなどについて解説いたします。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主様が気を付けるべき点
6.まとめ

原因

てんかんは、大きく「特発性てんかん」「構造的てんかん」の2つに分類され、それぞれ次のような原因や特徴があります。

 

特発性てんかん(真性てんかん)
脳に異常がないのに起こる原因不明のてんかんです。犬で最も多く、遺伝的な問題が関係していると考えられています

 

構造的てんかん(症候性てんかん)
脳に腫瘍や炎症、血管障害、奇形などの問題があることで引き起こされます。

 

分類上はてんかんではないが、同様の発作を引き起こす反応性発作があります。

 

反応性発作(非てんかん性発作)
頭蓋内以外の病因、すなわち全身性の代謝異常(低血糖など)や、肝障害(肝硬変、門脈シャントなど)や、腎障害(急性、慢性腎不全)、あるいは中毒も含まれます。

 

症状

てんかん発作では、次のような症状が見られます。

 

・目や顔、体の一部が痙攣する
・口をカチカチとしたり、クチャクチャさせる
・何もない空中を噛む
・異常な様子や声で鳴く
・よだれが異常に出る
・全身が痙攣する
・意識を失う
・体に力が入らなくなる  など

 

発作は通常数秒~1、2分ほどで終わり、その後は何事もなかったかのような様子に戻ることがほとんどです。

ただし、全身の痙攣や脱力などの全身性の発作が5分以上続く場合や、完全に意識が回復する前に次の発作が続いて起こる場合は、脳に損傷が起きたり命にかかわる重篤な状態に陥ることがあるため、すぐに動物病院を受診してください。

 

診断方法

てんかんでは、次のような検査を行います。

 

・問診
・血液検査
・神経学的検査
・CT検査、MRI検査
・脳波検査
・脳脊髄液検査  など

 

治療方法

てんかんは病気そのものを治すことができないため、治療は抗てんかん薬の内服によって発作を抑制しコントロールすることが目的となり、またほとんどの場合で生涯継続する必要があります

 

抗てんかん薬にはいくつかの種類があり、獣医師は発作の程度や薬の効き目、副作用などを総合的にみながら薬の種類や投与量、薬を組み合わせる必要があるかなどを判断します。

 

治療開始の判断
以下のような時には内服の開始になります。

・6カ月に2回以上のてんかん発作があるとき
・発作重責(発作が5分以上持続)あるいは群発発作(24時間以内に繰り返す発作)の場合
・発作後徴候(発作の後の異常行動や体調不調)が特に激しい(攻撃性や失明など)あるいは24時 間以上続く場合
・発作頻度あるいは持続時間が増加して来ている場合
・構造的てんかんが明らかな場合

 

予防法や飼い主が気を付けるべき点

残念ながら、てんかんの発症を予防する明確な方法はありません。
ただし、外傷によって脳に障害が起こり、その結果てんかん発作が引き起こされることもあるため、ペットの交通事故や落下事故などに十分注意することで発症のリスクを下げることができます。

 

また、発作は強いストレスや大きな音、光などの刺激によって誘発されるため、てんかんがあるペットの環境には十分配慮することが大切です。

 

まとめ

てんかんは発症を予防することは難しい病気ですが、発作をうまくコントロールすることで日常生活に大きな支障なく過ごすことが可能です。
愛犬・愛猫に気になる症状が見られた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
TEL:0766-52-1517
診療案内はこちらから

 

 

〈参考文献〉
・獣医内科学 第2版 小動物編
・犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている 編集 辻本元

 

 

一覧に戻る