獣医師コラム

犬の免疫介在性溶血性貧血について|自分の免疫機能によって赤血球を壊してしまう病気

免疫介在性溶血性貧血は、自分の免疫が体内の赤血球を攻撃し壊してしまうことで貧血が引き起こされる病気です。
犬では中齢期以降のメスで多く、特にアメリカン・コッカースパニエルコリープードルマルチーズなどの犬種で好発すると言われています。

 

今回は、犬の免疫介在性溶血性貧血について解説していきます。

 

 

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ

原因

自身の赤血球を攻撃対象(抗原)とみなしてしまう原因は明確には分かっていませんが、感染症や腫瘍、薬剤、ワクチン接種などが引き金となり引き起こされることがあります。
また、好発犬種があることから遺伝的な要因もあるとされています。

 

症状

発症すると貧血が起こり、次のような症状が見られます。

 

・食欲不振
・元気消失
・口の粘膜や舌の蒼白
・疲れやすい
・黄疸
・血色素尿  など

 

これらの症状がある場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

 

診断方法

免疫介在性溶血性貧血は、以下の検査を組み合わせて総合的に診断します。

 

・身体検査
・血液検査
・血液塗抹検査
・クームス試験
・尿検査
・画像検査(X線検査、超音波検査など) など

 

治療方法

治療は、一般的にステロイド剤などの免疫抑制剤を投与します。
また、状態によっては輸血や輸液、酸素吸入などを行ったり、感染症や腫瘍など引き金となっている病気がある場合にはそれらに対する治療も並行して行います。

 

治療は数ヶ月など長期間にわたることが多く、また状態によっては生涯投薬治療が必要となる事もあります。
さらに一度良くなってからも再発することがあるため、定期的な検査や経過の観察が重要です。

 

予防法や飼い主が気を付けるべき点

免疫介在性溶血性貧血を予防する方法は、残念ながらありません。
ただし、免疫介在性溶血性貧血が引き起こされる原因の一つとして知られている「バベシア症」はマダニが媒介する感染症のため、マダニの予防をしっかり行うことが発症のリスクを減らすことにつながります。

 

また病気の早期発見・早期治療がその後を大きく左右するので、定期的に健康診断を受けるよう心掛けるとともに、もしも愛犬に気になる症状がある場合には早めに動物病院を受診しましょう。

 

まとめ

犬の免疫介在性溶血性貧血は、自分の免疫機能によって赤血球を壊してしまう病気で、突然発症することも少なくありません。

 

病気が進行し重症化してしまうと、血栓症が引き起こり命にかかわることもあるため、早期の発見と治療が重要となります。
愛犬に気になる症状がある場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。

 

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
TEL:0766-52-1517
診療案内はこちらから

 

〈参考文献〉
・獣医内科学 第2版 小動物編
・犬と猫の治療ガイド2015 私はこうしている 編集 辻本元ら

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