シニア犬に多い脾臓腫瘍|早期発見のポイントと治療の可能性
愛犬が脾臓腫瘍と分かったら、驚きと不安でいっぱいになりますよね。治すことはできるのか、予後はどうなのかなど、さまざまな疑問や心配が頭をよぎることと思います。
しかし、脾臓腫瘍は早期発見と適切な治療を行うことで命を救える可能性が高い病気です。
今回は、脾臓腫瘍の特徴や診断方法、治療の選択肢、そして早期発見のためにできることをご紹介します。
■目次
1.犬の脾臓の役割とは
2.脾臓腫瘍の種類と特徴
3.脾臓腫瘍の主な症状
4.検査方法
5.治療方法と予後について
6.早期発見のために大切なこと
7.まとめ
犬の脾臓の役割とは
脾臓は、血液を溜める役割と免疫反応をサポートする役割を持つ重要な臓器です。
血液をろ過し、古い赤血球や異常な血球を除去するだけでなく、体内に侵入した細菌やウイルスを捉え、免疫反応を促進させます。また、出血などの緊急事態に備え、全体の血液量の約1〜2割を貯めておく機能も持っています。
そのため脾臓には多くの血管が集まっており、血管肉腫などの血管由来の腫瘍が発生しやすいという特徴があるのです。
脾臓腫瘍の種類と特徴
脾臓にできる腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。良性腫瘍は転移することはなく、成長速度がゆっくりであるのに対し、悪性腫瘍は肺や肝臓に転移しやすく、成長も速いのが特徴です。
脾臓腫瘍の発生割合は、良性が約1/3、悪性が約2/3とされています。悪性腫瘍の多くは早急な対応が必要になるため、早期の発見がとても重要です。
脾臓腫瘍の主な症状
脾臓腫瘍は初期段階では目立った症状が出にくいため、見逃されがちです。しかし、進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
・お腹が膨らむ
・食欲や元気がなくなる
・嘔吐が増える
特に腫瘍が破裂すると、以下の症状がみられることがあります。
・ぐったりして動かない
・呼吸が荒く速くなる
・体温が下がり、体が冷たくなる
こうした症状がみられた場合は、緊急的な処置を必要とすることがほとんどなので、速やかに動物病院を受診してください。
検査方法
脾臓腫瘍は血液検査だけでは発見が難しい病気です。
腹部のエコー検査が腫瘍の有無を確認するために最も有効な方法です。エコー台に横たわり、プローブという特殊な器具でお腹を撫でるようにして行うため痛みがほとんどなく、長くても20〜30分で終了するので、愛犬への負担も少なく済みます。
エコー検査で腫瘍が疑われる場合は、血液検査で貧血や他の臓器への影響を確認します。
特に腫瘍が発生しやすい10歳以上のシニア期(7歳〜)やハイシニア期(10歳〜)では、定期的な健康診断に画像検査を含めることが早期発見につながります。
治療方法と予後について
脾臓腫瘍の治療には、主に脾臓摘出手術が行われます。脾臓の機能は他の臓器が代替できるため、全摘出しても生活に支障はありません。
手術のタイミング
良性か悪性かの区別はエコー検査では困難で、取り出した腫瘍の病理検査(腫瘍の種類を特定する専門的な検査)をしないと分かりません。また良性でも、破裂して致命的な出血をすることがあります。そのため脾臓腫瘍が見つかった時点で手術を検討することが推奨されます。
手術後の流れ
数日間の入院を経て退院します。術後の病理検査で腫瘍の性質を確認します。
破裂前に手術を行うことで比較的良好な経過を辿るケースが多くみられます。
早期発見のために大切なこと
脾臓腫瘍は特異的な症状が少なく、日常生活で異常に気づきにくい病気です。そのため、以下のポイントを心がけましょう。
定期健診
腹部エコーやレントゲンを含む健康診断を定期的に受けることが大切です。
この病気は特に高齢の犬に多く見られるため、シニア期に入ったら、健康診断の頻度を増やすなどして、特に注意するようにしてください。
日頃の観察
元気や食欲がなくなった場合は、加齢によるものと決めつけず、早めにかかりつけの動物病院で診察を受けましょう。普段から愛犬の様子を細かく観察し、小さな変化にも気づけるように心がけることが、早期治療の第一歩となります。定期的な記録をつけることも、異変を見つける助けになります。
まとめ
脾臓腫瘍は、早期発見と治療によって命を救える可能性が高い病気です。特にシニア期に入った愛犬では、定期健診や画像検査を活用し、異常の早期発見に努めることが大切です。
また、日頃から愛犬の様子に注意を払い、少しでも不安があれば、かかりつけの動物病院に相談してください。
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