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獣医師コラム

犬の骨肉腫|正しい理解と治療選択で“痛みのない時間”を守るために

「検査の結果、骨肉腫でした」そう伝えられたとき、多くの飼い主様が目の前が真っ暗になるような感覚を覚えるのではないでしょうか。

 

犬の骨肉腫は進行の早い悪性腫瘍で、特に中〜大型犬に多く見られる病気です。診断を受けるとすぐに「余命」や「断脚」といった重い言葉が頭をよぎり、深い不安に包まれてしまうことでしょう。

 

しかし、現代の獣医療においては「完治」だけを目指すのではなく「痛みを取り除き、穏やかな時間をどれだけ守れるか」という視点が大切にされています。

 

今回は、犬の骨肉腫の特徴や治療法を、当院での実例も交えながらご紹介します。

 

 

■目次
1.骨肉腫の症状と診断|“見逃さないでほしいサイン”とは
2.骨肉腫の治療|断脚手術と抗がん剤の役割
3.断脚への不安と偏見に寄り添って
4.吉田動物病院が提供する専門的なサポート
5.まとめ|「治す」だけではない、愛犬の幸せを守る治療

 

骨肉腫の症状と診断|“見逃さないでほしいサイン”とは

骨肉腫は、特に前肢(肩甲骨の下の上腕骨)や後肢(膝下の脛骨)など「長骨」と呼ばれる部分に多く発生します。6〜9歳頃の発症が多いですが、若い犬に見られることもあります。

 

初期に見られる症状として、以下のようなサインが挙げられます。

 

足をかばって歩く、足を引きずる

触れると痛がる

腫れやしこりがある

活動量の低下

微熱や元気の喪失

 

これらの症状は「関節炎かな」「どこかで捻ったのかも」と見過ごされがちですが、痛み止めを使っても改善しない場合には、注意が必要です。

 

診断までの流れ

気になる症状が続く場合には、早期に正確な診断を受けることが大切です。

 

視診・触診:痛みのある箇所や腫れの範囲を確認します

レントゲン検査:骨が“溶けるように壊れている”場合、骨肉腫が強く疑われます

骨生検(病理検査):腫瘍の種類を特定するための検査です

胸部レントゲンまたはCT検査:肺への転移がないかを確認します

 

骨肉腫は進行が早いため「もう少し様子を見よう」と迷っているうちに状態が悪化してしまうこともあります。迷ったときは、できるだけ早めに動物病院へご相談ください

 

骨肉腫の治療|断脚手術と抗がん剤の役割

骨肉腫と診断された場合の基本治療は「断脚手術(切断)」と「抗がん剤治療」の組み合わせです。この病気に対しては、段階的に治療を進めていくことが重要になります。

 

痛みを取り除くための断脚

まず、断脚の目的は「延命」ではなく「痛みの除去」にあります。

 

骨肉腫が進行すると、腫瘍によって骨が壊され、犬は日常的に強い痛みに苦しむようになります。その痛みは鎮痛薬だけでは和らげることが難しく、根本的な対処には腫瘍ごと骨を取り除く手術が必要になります。

 

この手術によって、痛みの原因を断つことができるのです。

 

抗がん剤治療は“寿命を延ばすため”に必要

断脚手術のあとには、肺などへの転移を抑える目的で抗がん剤治療を行います。一般的には6回前後の投与が基本とされ、一定の間隔で数ヶ月にわたって続ける治療です。

 

抗がん剤によって完治を目指すことは難しいものの、進行を遅らせ、生活の質を保ちながら寿命を延ばすことが期待されます。

 

当院での実際の治療事例

当院では、断脚手術後に6回の抗がん剤治療を終えた犬が、肺への転移もなく、元気に生活を続けています。

 

治療はここで終わりではなく、今後どのようなケアや治療が必要かを、飼い主様と相談しながら最善の選択を模索しています。

 

断脚への不安と偏見に寄り添って

「足を切るなんてかわいそう」「本当に必要なの?」そう思われるのはとても自然なことです。特に地域によっては「断脚しても治らなかった」といった体験談が広まっていたり、過去の印象から不安や誤解が根強く残っている場合もあります。

 

しかし、骨肉腫は“断脚が必要になる病気”でもあります。腫瘍は骨の奥深くにまで入り込み、痛み止めではどうしても取りきれない痛みを引き起こします。断脚は、その強い痛みから愛犬を解放してあげるための、医療として必要な選択なのです。

 

また「手術をしても寿命が延びないなら意味がないのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、たとえ時間の長さが同じでも「痛みのない時間を過ごせる」ことには大きな意味があります。好きな場所を歩き、ごはんを食べて、穏やかに過ごせる――そのひとつひとつが、愛犬にとってかけがえのない日常になるはずです。

 

実際に、断脚を受けた多くの犬たちは3本脚でも元気に歩き、新しい生活にしっかりと順応しています。もちろん段差に気をつける、階段を控えるといった配慮は必要ですが「歩けなくなるのでは…」というご心配は、どうぞひとりで抱えずにご相談ください。

 

吉田動物病院が提供する専門的なサポート

当院では、犬の骨肉腫に対して以下のような体制で、治療からその後のケアまで一貫してサポートしています。

 

・腫瘍専門の獣医師が在籍

日本獣医がん学会認定・腫瘍科Ⅱ種資格を持つ獣医師が在籍しています。骨肉腫や抗がん剤治療に関する深い知識と経験を活かし、それぞれの犬に合わせた最適な治療をご提案します。

 

当院の獣医師プロフィールはこちら

 

・治療後も一貫したフォロー体制

断脚や抗がん剤治療のあとも、再発・転移の有無や体調の変化を継続的に確認しながら、緩和ケアなどの次の選択肢までサポートを続けていきます。

 

・セカンドオピニオンにも対応

他院で「もうできることはない」と言われた場合でも、新たな可能性を一緒に探ります。

※セカンドオピニオンをお考えの場合は、事前のご連絡をお願いしております。

 

・飼い主様に寄り添う診療スタイル

治療を押しつけることなく、ご家族とじっくり相談しながら進めていきます。断脚や抗がん剤に抵抗がある方も、まずはお気持ちをお聞かせください。

 

まとめ|「治す」だけではない、愛犬の幸せを守る治療

犬の骨肉腫は、確かに厳しい病気です。ですが「完治が難しいから何もしない」ということが、愛犬にとって最善の選択とは限りません。

 

つらい痛みから解放し、安心して過ごせる時間を少しでも長く守ってあげること。それこそが、骨肉腫と向き合ううえで大切にしたい視点だと、私たちは考えています。

 

当院では、専門性と温かい心をもって、愛犬とご家族の「これから」に寄り添います。もし今、迷いや不安を感じていらっしゃるなら、どうか一度ご相談ください。一緒に、最善の道を考えていきましょう。

 

富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

TEL:0766-52-1517

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