多飲多尿や腹部膨満、脱毛などの症状が見られる|犬の副腎皮質機能亢進症について
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、人や猫に比べて犬に多く見られる内分泌疾患です。
発症すると多飲多尿や脱毛などが見られ、また免疫機能が低下するために様々な病気が引き起こされる可能性もあります。
今回は、犬の副腎皮質機能亢進症の症状や原因、治療法などについて解説していきます。
副腎皮質機能亢進症の症状
副腎皮質機能亢進症では、以下のような症状が見られます。
・多飲多尿
・多食
・お腹の膨れ
・脱毛
・皮膚などへの石灰沈着
・皮膚が薄くなる
・パンティング(口を開けて舌を出し「ハアハア」と荒い呼吸を繰り返す行為)
・筋力の低下
・血栓症(血管内に血の塊が詰まり血の流れを止めてしまう症状)
副腎から作られるステロイドというホルモンにより血栓ができやすくなり、血栓症が起こることがあります。その場合は突然亡くなってしまうこともあります。
上記のような症状が見られる場合には、早めに動物病院で診察を受けましょう。
副腎皮質機能亢進症の原因
副腎皮質機能亢進症は、腎臓の頭側にある副腎という臓器から副腎皮質ホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されることによって引き起こされます。
コルチゾールの分泌が過剰になる原因としては
①下垂体の腫瘍や過形成(下垂体性副腎皮質機能亢進症)
②副腎の腫瘍
③ステロイド剤の長期的な投与
が挙げられ、犬の場合80~90%が①の下垂体によるものと言われています。
副腎皮質機能亢進症の診断
副腎皮質機能亢進症は、以下の方法で診断します。
・血液検査
一般的な血液検査に加えて、ACTH刺激検査などの特殊な血液検査も行います。
・画像検査
腹部のエコー検査やレントゲン検査で左右の副腎の大きさを確認します。また必要に応じてCT検査やMRI検査を行う場合もあります。
副腎皮質機能亢進症の治療法
治療法には内科的な治療と外科的な治療、放射線治療があり、多くの場合は内科的治療を行います。
・内科的治療
トリロスタンやミトタンという、コルチゾールの分泌を抑制したり副腎の働きを阻害する薬を使用します。
しかし内科的治療では根治はできないため、生涯投薬を継続する必要があります。
・外科的治療
原因である副腎や下垂体を摘出します。
特に下垂体性副腎皮質機能亢進症においては下垂体の摘出が根治療法となります。
しかし、どちらも難しい手術ですので多くは大学の付属動物病院などの二次診療施設で行われます。
・放射線治療
下垂体腺腫の場合には放射線治療が行われる場合もあります。
ただし必ずしもコルチゾールが低下するわけではないため、症状の改善のために内科的治療を並行して行います。
副腎皮質機能亢進症の予防法
残念ながら、副腎皮質機能亢進症には予防法はありません。
定期的に健康診断を受け早期発見・早期治療を行えるようにするとともに、もし多飲多尿や脱毛などの気になる症状がある場合には早めに病院を受診しましょう。
当院では小型犬や中型犬では12歳以上、大型犬では10歳以上で推奨しているハイシニア検診の1項目に副腎皮質機能亢進症の診断に必要な血液検査、超音波検査があるため、早期発見が可能です。
※検診内容は当ホームページをご確認下さい。
■検診内容はこちら
まとめ
副腎皮質機能亢進症では、コルチゾールが過剰に分泌されることによって多飲多尿や腹部膨満、脱毛など様々な症状が引き起こされます。
多くの場合は内科的な治療となりますが、根治できないため生涯にわたり投薬を継続する必要があります。
予防法はなく、早期発見・早期治療が重要となるので、定期的に健康診断を受けましょう。
愛犬にもし副腎皮質機能亢進症と思われる症状が見られた場合は、お早めに当院へご相談ください。
富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
TEL:0766-52-1517