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獣医師コラム

犬や猫の乳腺腫瘍を予防するには?避妊手術の最適なタイミングと重要性

犬や猫に発生する乳腺腫瘍は、適切なタイミングでの避妊手術によって予防が期待できる病気です。特に若い時期の手術は、将来のリスクを大きく下げることにつながります。

 

乳腺腫瘍は高齢になってからの発症が多い一方で、若くても気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。だからこそ、発症する前に“防ぐ”という視点がとても大切です。

 

今回は、犬と猫それぞれの乳腺腫瘍の特徴や、予防のために知っておきたい手術のタイミングについて、詳しくご紹介します。

 

 

■目次
1.犬の乳腺腫瘍|予防できる「最大のチャンス」はいつ?
2.猫の乳腺腫瘍|避妊による予防効果と犬との違い
3.犬と猫でこんなに違う|乳腺腫瘍の進行と治療アプローチ
4.予防の基本は「早期避妊」と「定期的なチェック」
5.まとめ

 

犬の乳腺腫瘍|予防できる「最大のチャンス」はいつ?

犬の乳腺腫瘍は、発情の回数と密接な関係があります。特に重要なのが「初回発情を迎える前」に避妊手術を行うことです。このタイミングで手術を行うことで、将来的な乳腺腫瘍の発症リスクをほぼ100%近く抑えることができるとされています。

 

これは、エストロゲンやプロゲステロンといった卵巣ホルモンが乳腺細胞に与える影響が大きく関係しています。ホルモンの刺激を受ける前に卵巣を摘出することで、乳腺細胞の腫瘍化を予防できるというわけです。

 

一方で、1回の発情を経験してから避妊手術を行った場合は、92%の予防効果が期待出来ますが、2回目以降の発情を経験してから避妊手術を行った場合は、この予防効果が大きく下がってしまうことも分かっています。

 

1歳の誕生日を迎える前、できれば初回の発情を迎える前、または1回目と2回目の発情の間に避妊手術を検討することが、愛犬の将来の健康を守る大きな一歩になります。

 

猫の乳腺腫瘍|避妊による予防効果と犬との違い

猫の乳腺腫瘍も、避妊手術によって予防が期待できます。生後6カ月以内の避妊手術により、発症率を約90%近く抑えられるとされており、こちらも早期の手術がカギとなります。

 

注意が必要なのは、猫の乳腺腫瘍の約85~90%が悪性だという点です。小さな腫瘍でも進行が早く、見つかった時点ですでに転移が進んでいるケースもあります。そのため「発症させないこと」が何よりも重要になります。

 

また「猫の避妊=妊娠予防」と考える飼い主様もいらっしゃいますが、実際には乳腺腫瘍をはじめとする多くの病気の予防にもつながる選択肢です。愛猫の将来を見据えた健康管理の一環として、避妊手術について前向きに考えてみることをおすすめします。

 

犬と猫でこんなに違う|乳腺腫瘍の進行と治療アプローチ

乳腺腫瘍は犬と猫のどちらにも発生する病気ですが、その特徴や治療方法には大きな違いがあります。

 

発見されやすさの違い

乳腺腫瘍は早期に見つけることがとても大切ですが、犬と猫では発見のしやすさが異なります。

 

▼犬の場合
・しこりがある程度大きくなってから見つかることが多い

・お腹をなでているときなどに飼い主様が気づきやすい

 

▼猫の場合
・小さな腫瘍でも悪性であることが多く、見た目や触れた感触では分かりにくい

・発見されたときにはすでに進行していることも多く、治療が難しくなるケースも

 

治療方法の違い

腫瘍の状態によって選択される治療法にも違いがあります。

 

▼犬の乳腺腫瘍手術
腫瘍の部位や大きさに応じて、部分的な切除で対応できる場合が多い

 

▼猫の乳腺腫瘍手術
再発や転移のリスクが高いため、片側または両側の乳腺をすべて切除する大きな手術が必要になることがある

 

犬と猫では、発症のしかた、進行のスピード、治療の負担まですべてが異なります。

同じ名前の病気でも、実際の対応や経過はまったく別物といえるため、それぞれの動物に合わせた早期の判断と準備が大切です。

 

予防の基本は「早期避妊」と「定期的なチェック」

乳腺腫瘍を予防するうえで最も大切なのは、適切な時期に避妊手術を行うことです。以下のタイミングでの手術が、発症リスクを大幅に下げる最善の手段とされています。

 

犬の場合:初回発情前(生後6カ月~1歳未満)

猫の場合:生後6カ月以内

 

また、すでに発情を迎えた犬や猫であっても、できるだけ早く小さなしこりに気づくことが重要です。

 

普段のスキンシップの中でお腹まわりをやさしく触れる習慣をつけておくと、違和感に気づきやすくなります。もしも乳腺部に小さなしこりや左右差が見られた場合は、すぐに動物病院にご相談ください。

 

乳腺腫瘍は、その大きさ・位置・性質によって治療方針が大きく変わります。早い段階で見つけられれば、治療の選択肢が広がり、命に関わるリスクを抑えることにもつながります。

特に高齢で未避妊の犬や猫では、ちょっとした変化でも、気になることがあれば早めの受診をおすすめします。

 

まとめ

犬や猫の乳腺腫瘍は、避妊手術という一つの選択によって将来的な発症リスクを大きく抑えられる病気です。特に犬では、初回発情前の避妊手術によりほぼ100%の予防が可能であることがわかっています。猫の場合も、乳腺腫瘍の多くが悪性であることから、発症自体を防ぐことが命を守る第一歩となります。

 

避妊手術にはさまざまなメリットがありますが、乳腺腫瘍の予防という観点からも、まずはその重要性をしっかり理解していただくことが大切です。「避妊手術のタイミングが分からない」「手術に不安がある」といったお悩みがありましたら、どうぞお気軽に吉田動物病院までご相談ください。

 

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富山県射水市の動物病院 吉田動物病院

TEL:0766-52-1517

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