【獣医師監修】猫の尿路結石・尿管結石を防ぐ最新知識|愛猫との幸せな暮らしを守る6つのポイント
猫では尿路の問題が多い傾向がありますが、その中でも「尿路結石症」、特に「尿管結石」の発症が増加傾向にあることをご存じでしょうか?
尿路結石は、尿を作り排泄するまでの尿路に結石ができることで、さまざまな症状を引き起こします。場合によっては命に関わる事態に陥ることもあるため、猫の健康管理において特に注意が必要な疾患です。
今回は、猫の尿路結石、尿管結石について解説します。
■目次
1.猫の尿路結石・尿管結石とは?
2.猫の尿路結石・尿管結石の症状
3.猫の尿路結石・尿管結石の原因
4.診断方法
5.治療法
6.予防法|愛猫との幸せな暮らしを守るポイント
7.まとめ
猫の尿路結石・尿管結石とは?
尿路とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道という尿の通り道の総称で、そのどこかに結石ができる病気を「尿路結石(症)」と呼びます。そして「尿管結石」とは、尿路の中でも尿管に結石ができた状態のことです。
結石にはいくつかの種類があり、猫の尿路結石では主に「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)」と「シュウ酸カルシウム」の二種類が代表的です。
以前はストルバイトによる尿路結石が多く見られましたが、近年ではシュウ酸カルシウムによる尿路結石が増えてきています。特に猫の尿管結石はシュウ酸カルシウムでできていることが多いといわれています。
猫の尿路結石・尿管結石の症状
尿路結石症で見られる主な症状には以下のようなものがあります。
・頻尿
おしっこの回数が増えている状態のことで、1日に何度もトイレに行く様子が見られます。少ししかおしっこが出ていないことも多いです。
・血尿
尿路のどこかからの出血があり、尿に血液が混じっている状態のことを指します。おしっこの中に少量の血が混ざっている場合や、おしっこ全体がオレンジ色やピンク色、真っ赤に染まって見えることもあります。
・排尿痛
おしっこするときに痛みを感じ、痛そうに鳴くことがあります。また、トイレ以外の場所でおしっこをすることもあります。
・尿が出ない
トイレに行って排尿姿勢をとっても、おしっこが出ない状態です。この状態を放置すると命に関わるため、非常に危険なサインです。
尿管結石では、この他にも「食欲不振」や「元気消失」といった症状が見られることも多くあります。
また、左右どちらかの片側だけで尿管結石がある場合は、もう一方の腎臓が働きを補うことがあり、わかりやすい症状が現れないこともあります。そのため、尿管結石の発見が遅れると結石を取り除いても腎不全が生涯残る場合があります。
さらに、結石によって両側の尿管や尿道が完全に塞がれてしまった場合には、急性腎不全や尿毒症を引き起こし、多くの場合2~3日で命を落としてしまうことがあるため、早期発見・治療が非常に重要です。
猫の尿路結石・尿管結石の原因
・飲水不足
結石は尿の中に含まれている成分から作られるため、尿が濃いと結石ができやすくなります。水を飲む量が少ない場合には、尿が濃縮されて結石の形成リスクが高くなります。
・食事
結晶や結石の主な成分となるのは、尿中のカルシウムやリン、マグネシウムなどのミネラル成分です。また、尿のpHバランスが崩れることでも結石ができやすくなります。
食事で結石の元となるマグネシウムやリンなどの成分の摂りすぎや、タンパク質を多く摂ることで尿のpHバランスが乱れ、結石の形成促進につながることがわかっています。
・遺伝的要因
尿路結石症は遺伝的要因で発症することも多く、特にヒマラヤン、バーミーズ、アメリカン・ショートヘアー、スコティッシュ・フォールドなどの猫種では発症しやすいことが知られています。
・運動不足や肥満
運動不足は飲水量の低下や肥満につながります。また、肥満になると動くことが億劫になりトイレに行く回数が減ることも結石のリスクを高める要因となります。
・ストレス
ストレスを受けると、水を飲む量やトイレの回数が減る傾向があり、それが結石の形成を促進することがあります。
診断方法
<問診>
尿路結石が疑われる場合、まず飼い主様から症状や普段の食事内容、飲水量などについて詳しくお伺いします。排尿に関する問題や行動の変化も重要なポイントです。
<触診>
腹部の触診で膀胱がパンパンに膨らんでいる場合は、尿道閉塞が強く疑われます。
<血液検査>
尿路に閉塞がない場合、血液検査では大きな異常は見られませんが、閉塞が起きている場合は異常値が出ることがあります。
<尿検査>
尿pHや、尿中の結晶や赤血球、細胞、細菌が含まれているかを確認します。
<画像検査>
レントゲンや超音波検査によって、結石の有無や位置、尿管や尿道に閉塞が起きていないかなどを確認します。どこに問題があるのかを明確にするための重要な検査です。
治療法
猫の尿路結石の治療は、結石の種類や大きさなどによっても異なりますが、主に以下の方法で治療を行います。
<食事療法>
尿路閉塞がなく、また結石がストルバイトである場合には、療法食を用いて結石を溶解させる治療を行います。
<内科的治療>
症状や状態に合わせて、抗炎症剤や抗生剤、止血剤などの内服を行います。
<カテーテルの挿入>
尿道閉塞が起きている場合や膀胱内に小さな結石がある場合では、尿道に細いカテーテルを挿入し、閉塞を解除します。また、生理食塩水を入れて膀胱から結石を洗い出す処置を行います。
<外科的治療>
尿路結石が大きかったり数が多かったりする場合や、結石がシュウ酸カルシウムで溶かせない場合、また閉塞が起きている場合には、手術で結石を取り除くことが必要です。
予防法|愛猫との幸せな暮らしを守るポイント
1,十分な水分摂取
尿路結石の形成を予防するためには、愛猫が十分な水分を摂取できる環境を整えることが大切です。具体的な方法としては、水飲み場の数を増やす、流水式の給水器を使うことで、飲水量を増やす工夫ができます。
また、ウェットフードを食事に取り入れることで自然に水分を摂取させることも有効です。適度な運動も飲水量の増加につながるので、日頃から意識してみましょう。
2,適切な食事管理
尿路結石の形成には食事が大きく関わるため、普段の食事から結石の原因となる成分を減らすことが予防のポイントです。
栄養バランスが整った高品質なフードを選び、結石ができにくい体内環境を維持しましょう。
特に結石ができた経験のある猫の場合、治療後も食事管理が必要になることがあるため、獣医師の指示に従うことが大切です。
3,適度な運動
猫は運動不足によって肥満になると、飲水量やトイレに行く頻度が減ってしまう傾向があるため、尿路結石症を起こしやすくなります。
猫用のおもちゃを使った遊びを取り入れることや、室内にキャットタワーを設置するなどの工夫をして日頃から適度な運動を心がけ、愛猫が運動不足や肥満にならないように注意しましょう。
4,ストレス管理
猫が生活の中でストレスを極力感じないように、食事の時間や一緒に遊ぶ時間など、生活リズムはできるだけ一定にすることが大切です。
また、愛猫が安心してくつろげる隠れ場所を作る、高いところから見下ろせる場所を用意する、大きな音を立てない、しつこく構いすぎないことなども、猫にとってストレスの少ない快適な環境となります。
5,定期的な健康診断
尿路結石症は猫の年齢に関係なく発症し、場合によっては命に関わるほど重症化することもあります。また、猫は不調を隠す傾向もあるため、気が付いたときには病気が進行していることも珍しくありません。
そのため、愛猫の健康を守るためにも、6歳までは最低でも1年に1回、7歳を超えたら半年に1回の頻度で定期的に健康診断を受け、尿路結石症の早期発見・早期治療に努めることが重要です。
6,キャリーや病院への慣れ
病院を受診する際、猫がキャリーに慣れていないと中に入ることを嫌がって逃げてしまったり、暴れたりしてしまう可能性があります。
そのため、普段の生活の中でもキャリーを出しておき、中に入ることに慣れておきましょう。
また、動物病院の待合室では、キャリーにバスタオルなどをかけて目隠しをしてあげると安心できます。
まとめ
猫の尿路結石症は、食事や飲水量、肥満、遺伝、ストレスなどさまざまな要因が作用して引き起こされます。
発症を予防するためにも、日頃から食事管理を行うことや、十分に水分を取らせること、適度な運動をさせることなどが重要となります。
また、尿路閉塞を起こしてしまうと、短時間のうちに命に関わる状態にまで陥ってしまう危険もあります。
もし愛猫の様子に異常が見られた場合には、様子を見ずに早急に動物病院を受診しましょう。
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富山県射水市の動物病院 吉田動物病院
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