今月の病気⑫ 小鳥の卵塞

小鳥の卵塞
小鳥科  井出いづみ
今回はセキセイインコや文鳥、ラブバードなど来院数の多い鳥種によくみられる卵塞(卵詰まり)についてお話します。
鳥類の雌において、体内で卵を形成するのに大体24時間かかるとされています。詳しく説明すると、卵巣から排卵された卵子が卵管内で受精し、その後卵管内を通過していく過程で卵白や卵殻が形成されていきます。最後には総排泄孔から産卵されます。ここまでにかかる時間が24時間、長くて28時間と言われています。
ですから卵塞とは何らかの原因で「卵が24時間経過しても産卵されない状態」と言えます。
ではなぜ卵が正常に産卵されないのでしょうか?
主な原因にカルシウム不足による「卵管の収縮不全」と「卵形成の異常」が挙げられます。
卵殻の形成にカルシウムが使い果たされていると、卵管の収縮がおこらず産卵することが出来なくなります。更に卵形成が正常に行われないと変形卵や未熟卵などが生じ通過障害が起こって産卵がうまくいかなかったり卵管が傷ついたりしてしまいます。
また血中のカルシウムが不足することで脚麻痺や起立困難をおこしたり、致命的な痙攣をおこす事もあります。
この他、卵塞の原因には環境ストレスによるもの(例えば冬期の寒冷ストレス)や運動不足や栄養低下などによる筋肉の障害など様々です。飼育鳥を含め鳥類の繁殖期は春ですが条件さえ整えば通年発情となり、昨今では飼育下における過発情も卵塞につながる大きな要因の一つとなっています。ですから卵塞は、適切な飼育環境(温度、日照時間、日光浴、カルシウムやビタミンDの摂取など)を整えることで予防することも可能な疾患ともいえるでしょう。
ではご自宅で飼育している雌鳥が卵塞を起こしている状態とはどのような状態を言うのでしょうか?
卵塞を疑う症状として一般的に以下のようなものが挙げられます。
・腹部が膨らんできたが卵を産まない
・お腹を触ったら何かある
・イキンでいるが産卵しない
・床に下りて膨らんで寝ている
・おしりから白いものや赤いものが出ている
・起立困難
・元気、食欲低下など
以上のような症状がみられた時にはなるべく早めに病院を受診することをお勧めします。
卵塞をおこした雌鳥は状態が急速に悪化し、軽症にみえても急死することもあります。
卵塞は命にかかわる油断の出来ない疾患なのです。


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では最後に、卵塞の治療についてお話します。
卵塞を起こしている雌鳥は停滞した卵によって腹腔内の臓器や気嚢が圧迫されて呼吸状態が悪かったり、腹部の疼痛によって重度の膨羽を起こしていたりと非常に危険な状態の場合もあるため、まずは触れる状態かを確認し必要であれば酸素吸入をしながら様子をみます。
触診が可能であれば大抵の場合はカルシウム剤の注射投与を行います。先にお話した低カルシウム性の卵管収縮不全による卵塞の場合は、カルシウム剤の投与後に産卵することが多いのですが、それでも正常な産卵が起こらない場合は、用手にて腹腔内の卵を圧迫しながら排泄口側へたぐり寄せ排出させます。卵管口がうまく開かなかったり、卵と卵管が癒着していたりする場合は卵に注射針で穴をあけ中身を吸引してから卵殻を取り出す場合もあります。
以上のような用手法でも卵排出ができない状況(卵が異常な位置にある、すでに破卵しているなど)では開腹手術を検討する必要もでてきます。
犬や猫であれば不妊手術である卵巣子宮摘出術が一般的ですが、鳥類においては体内における生殖器の構造やサイズの問題などから不妊手術が一般的ではありません。
ですが何度も卵塞を起こしたり、卵塞によって卵の排出が困難な際には卵管摘出術を試みる準備が必要かと思います。
卵塞を起こした鳥は次も卵塞を起こす可能性があります。日頃からビタミン剤やミネラルの投与、日光浴を行ったり、温度や日照時間そして食餌量を適切に管理して過発情を誘因しないよう日頃からしっかりと管理を行うことが大切ではないかと思います。



今月の病気⑪ 膝蓋骨内方脱臼

膝蓋骨脱臼

外科 淺田慎也

 今回は犬の膝蓋骨(膝のお皿)の脱臼についてです。膝蓋骨の脱臼は、肩関節や股関節の脱臼のような「外れると動かなくなる・とても痛い」というものではなく、走ったときにスキップのようになる程度のほとんど症状がないものが多いためご家族の方も気づきにくい病気です。しかし、治療せずに放っておくと大腿骨などが変形したり、前十字靭帯の損傷により急激に跛行が悪化する場合もあります。ヨークシャーテリア、トイ・プードル、チワワなどの小型犬でよく認められ、関節疾患のなかでも発症する数が多い疾患の一つです。今回は小型犬で認められる膝蓋骨内方脱臼に関して、前編として「症状と診断」についてお話しします。

 正常な膝は大腿骨と脛骨が靭帯と筋肉により繋がっています。膝の上を走る靭帯が膝蓋靭帯で(図1、2)、靭帯の裏には膝蓋骨があります(図3)。膝蓋骨が大腿骨の溝(滑車溝)(図4)をスムーズに動くことにより膝を曲げ伸ばしします。

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     図1               図2              図3

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     図4                図5

膝蓋骨脱臼というのは滑車溝から膝蓋骨が外れている状態のことを指し、小型犬で認められるものはほとんどが内側に脱臼(内方脱臼)しています(図5)。

 小型犬で発症する膝蓋骨内方脱臼はそのほとんどが先天的なもので、原因となる骨格の異常を持って生まれ、それが成長とともに進行して脱臼が発症すると考えられています。したがって多くの犬で左右差はあるものの両側で発症しています。

 診断は触診により行われ、特別な検査は必要ありません。しかし小型犬でよく認められる股関節の疾患との鑑別のために後肢のX線検査をすることがあります。また外科手術の計画のためにはX線検査が必要です。手術については後編でお話しします。

膝蓋骨内方脱臼は状態により4段階に分類されます。簡単に説明すると、

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 グレード1〜2の状態では、症状はほとんどないため病院での健康診断などで発見される場合が多いです。ご家庭では抱っこなどしているときに、後ろ足がカクッとなる感じが経験されることがあります。この段階では、治療が必要になることは少ないですが、体重管理や過度な運動を控えたり、床材を滑らないものに変えるなどして悪化させないことが重要になります。
 グレード3以上になると膝蓋骨が常に外れた状態になるため、走った時の跛行が目立ったり、骨の変形が認められるようになります。

図6は正常な犬の後肢、図7・8はグレード3の内方脱臼の犬の後肢の写真です。

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      図6              図7              図8

このように膝蓋骨脱臼が進行し、常に後肢に負荷がかかった結果、いわゆる「O脚」のように後肢が変形していきます。図7の状態からさらに進行すると図8のように足先が交差するほど変形してしまいます。これがさらに悪化すると膝の屈伸が困難になるため、跛行も顕著になってきます。
X線画像上でも変化が顕著にわかります。図9は膝蓋骨脱臼がない小型犬の画像で、図10がグレード3の内方脱臼の小型犬の画像です。

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        図9                  図10

見比べると膝蓋骨が外れていることのほかに、正常犬では真っ直ぐの大腿骨が図10では内側に湾曲していること、脛骨粗面が内側を向いていることがみてわかります。

 このような骨の変形は膝蓋骨が常に外れた状態になるグレード3以上で顕著になっていくため、当院では変形が激しくなる前の手術をお勧めしています。ただし、脱臼があるからすぐに手術が必要になるわけではなく、若齢時にグレード2の状態だったとしても適切に管理をすることで悪化することなく一生を過ごすケースもあるため、グレード2以下の症例では定期的に触診を行い、グレードが進行した時点で手術の相談をしていくことになります。また、グレード3以上であったとしても高齢の症例の場合は、手術の負担などを考えてお勧めしないことが多いです。手術の適応も症例によって様々なので、手術が必要かお悩みの場合は診察をお勧めします。
 次回は、実際に手術についてお話しします。

今月の病気⑩ 肥大型心筋症

肥大型心筋症
循環器科   阿部素子

 今回は猫の循環器疾患の中で多く見られる肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy; HCM )についてです。
 
 肥大型心筋症は心室の筋、特に左心室の壁が内腔に向かって厚くなり、かつ線維化するなどして内腔が狭くなり、硬くなってうまく拡張できなくなる疾患です。左心室の壁の全体が均一に厚くなる場合もありますが、部分的に厚くなるものもあります。
左心室に入る血液の量が減り、全身へ送る血液は減ってしまいます。
また、左心室の圧が上がり左心房からの血液が入りにくくなって、結果的には左心房圧上昇、肺での圧力もあがり、肺水腫や胸水の貯留を起こすこともあります。

 メインクーンやラグドールでは遺伝子との関連も知られています。この2種のほか、アメリカン・ショートヘアーやスコティッシュ・フォールド、ブリティッシュ・ショートヘアーでは多いとも言われますが、短毛雑種でも珍しくはありません。

  診断は胸部レントゲン検査での心拡大の有無や胸部超音波検査での心臓の形態、血流の状態などで行います。

 心拡大が進むと、レントゲンをうつ伏せで撮った時(DV像)の心臓の形がハート形を呈することもあり、バレンタインハートとも呼ばれています。(下図)

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 猫の胸部レントゲン写真:左は正常な心臓形態の猫。右は肥大型心筋症の猫。

 超音波検査では心筋、特に左心室の心筋が厚くなっているのが確認されます。(下図)

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心臓の超音波画像(右下大動脈流出路像):左は正常な猫の画像。右は肥大型心筋症の猫。


 厚い心室中隔(左心室と右心室を隔てる壁)によって大動脈への出口が狭くなる閉塞性肥大型心筋症では、狭い通路へ血液を押し込むために心筋の負担はさらに大きくなります。
この時、大動脈への出口のすぐそばにある僧帽弁(左心房と左心室の間にある弁)が速い血流に引き込まれると、僧帽弁が開いてしまい、左心房への血液の逆流を起こすこともあります。これによって左心房の圧力が上がり、肺水腫や胸水を引き起こしやすくなります。

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心臓のカラードップラー超音波画像:左は正常な猫の画像。右は閉塞性肥大型心筋症の猫の画像


 この病気は進行性です。聴診での心雑音、不整脈の聴取で発見されることもありますが、初期には特に症状もなく上記のような画像検査をしなければ気づかれないことも多い疾患です。
 肺水腫や胸水貯留、あるいはこの疾患に絡んで起こる可能性の高い動脈血栓塞栓症は、発症すると大きな苦痛を伴い、しかも致命的な症状です。(注:血栓症はこの疾患にかかわらず発症することはあります。)
 この病気についてはまだ全て解明されたわけではなく、予防することはできません。
ですが、早期にこの疾患の可能性が高いことがわかれば、循環を改善する薬剤や血栓を生じにくくする薬剤を使用することで、苦痛を伴う症状の発症リスクを下げられる可能性はあります。この疾患にかぎりませんが、病気の早期発見のため、外見上元気な時でも画像検査を受けていただければと思います。


今月の病気⑨ 歯石について

歯石について
歯科 高村文子

ペットが年を取ると、お口のにおいが気になってきませんか?それは、歯に付着した歯垢や歯石のせいかもしれません。

今回の症例は、鼻水とくしゃみの原因が歯科疾患であった犬です。デンタルケアが不十分だったために歯石が歯全体に付着してしまいました。特に犬歯に重度に歯石が付着していまい、歯根(歯の骨に埋もれている部分)へと感染が広がり、周囲の骨を溶かしてしまいました。その結果、鼻の骨も溶けてしまい、犬歯の歯根と鼻が貫通して(口鼻腔瘻といいます)、感染が鼻腔内にまで及び、くしゃみや鼻水が出てしまったのです。こうなると、抗生物質はその場しのぎの治療で、根本的な治療は抜歯になります。
 
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    歯全体に重度の歯石が付着
 

犬歯の抜歯はすでにグラグラしている場合を除いて、困難な処置になります。犬歯の周囲の骨をドリルで削り抜歯した後、骨の表面をきれいに整えてから歯肉を切開したりスリットをいれたりして、抜歯したところを覆うように縫合します。



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    左上顎犬歯を抜歯したところ              抜歯窩を歯肉で覆い縫合したところ


 今回の症例もそうでしたが、歯の外側(唇をめくって見える面)より歯の内側の歯石が重度で歯周ポケットが深いケースはよくあります。デンタルケアをしているつもりでも歯の内側まではしっかり磨けていないことが多いからです。

歯科4.jpgのサムネール画像
  左上顎犬歯の内側の深い歯周ポケット


 子犬のころから、デンタルケアをすることによってこの症例のような状態にはならずに済みます。しっかりデンタルケアをして、健康な歯を維持していきましょう。

 次回は詳しくデンタルケアについて紹介していこうと思いますが、早く知りたい!という方は、当院の獣医師もしくは看護師に気軽におたずねください。

今月の病気⑧ うさぎの食餌管理について

うさぎの食餌管理について
エキゾチックアニマル科 山本茜
うさぎは食べたものを盲腸内に住む微生物に分解させ、
分解してできたものを盲腸便という形で栄養分として再利用している動物です。
そのため、消化管内の細菌のバランスが非常に重要になってきます。
細菌のバランスは生活環境や食事内容によって容易に崩れてしまいます。
今日はうさぎの食事管理、そのなかでも重要な乾牧草についてお話します。

うさぎの食事には主食として乾牧草、栄養補助としてペレットを使いましょう。
ペレットは1日の量を計測して与えます。
その一方で乾牧草は切らすことなく補充して食べ放題にしておく必要があります。
あくまでも主食は牧草です。
牧草はチモシーなどのイネ科牧草を主体にしましょう。
子供のうさぎならばアルファルファなどのマメ科牧草を用いるのも良いでしょう。
乾牧草はうさぎにとって重要な繊維質の補充に重要です。
また、牧草を食べるときの顎の動きは臼歯の不正咬合の予防にもなります。
「生の牧草でもいいですか?」「うちの子は生野菜を沢山食べているから...」との声もよくお聞きしますが
繊維質を効果的に得られるのはやはり乾牧草です。
「うちの子は牧草が嫌いでペレットばかり食べている」という言葉も非常によくお聞きします。
うさぎは幼い頃身についた食習慣をなかなか変えません。
幼い頃に牧草を食べる習慣をしっかりつけておくことが大切です。
一般的にうさぎさんたちは乾牧草よりもペレットやおやつのほうを好んで食べます。
そのため、ペレットを好き放題食べられる環境下では優先的にペレットを食べてしまって
牧草をなかなか食べてくれなくなることが多いです。
先程申し上げました通り、あくまでも主食は牧草です。ペレットは1日の給与量をしっかり計測して与えましょう。
ペレットの給与量は適切で、なおかつおやつも与えていないのに、牧草をどうしても食べてくれないという子には
2番刈りや3番刈りのチモシーをお試し頂いたり(これに関しては後述します)、
オーツヘイやバミューダグラスといった多種とのミックス牧草をオススメさせて頂くこともあります。 

ではここで牧草選びのコツをお話します。
牧草(チモシー)を選ぶときは
・茎や葉が緑色で香りが豊富
・茎が長めのもの
・1番刈り
が望ましいです。

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1番刈り、2番刈り、3番刈りというのはチモシーの収穫時期の違いです。
1番刈りは一般的に2番刈りや3番刈りよりもタンパク質や繊維質に富んでいるので、
大人うさぎの普段の食事としてオススメします。
牧草が好きでない子や高齢期の子には葉の柔らかい2、3番刈りをオススメしています。
(高齢の子でも1番刈りを好んで食べるのであれば特に問題はありません)
袋を開けたまま放置しておくとカビが生えることもありますので、気を付けましょう。

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今月の病気⑦ 猫のアトピー性皮膚炎

猫のアトピー性皮膚炎
院長(総合科)吉田俊一 獣医腫瘍認定医Ⅱ種

 猫は犬と異なり、いわゆる猫のアトピー性皮膚炎を指す疾患名が統一されず「過敏性皮膚炎」、「非ノミ非食物関連性過敏性皮膚炎」、「猫アトピー様皮膚炎」など様々な呼び名があります。また、アトピー性皮膚炎で特徴的なアレルゲン特異的IgE抗体の産生や遺伝的要因が証明されていないこともその理由です。

診断
 かゆみや炎症がある猫の皮膚疾患から外部寄生虫(ノミやダニ等)や感染症(細菌やカビ等)、食物アレルギー等を除いた皮膚疾患がアトピー性皮膚炎の可能性となります。
 犬のような特徴的な症状である体の腹側、四肢端、趾間、目・口周囲、外耳炎等は猫にはありません。症状は多様性ですが、逆に特徴的な臨床症状が以下の4つです。
 ①自己誘発性対称性脱毛
 ②頭部・頚部のびらん
 ③粟粒性皮膚炎
 ④好酸球性肉芽腫群(無痛性潰瘍、好酸球性局面、好酸球性肉芽腫)

治療
 治療には局所療法と全身療法があります。
1.局所療法
 1)ステロイド外用剤
 2)タクロリムス外用剤(免疫抑制剤)
2.全身療法
 1)コルチコステロイド剤
 2)シクロスポリン(免疫抑制剤)
 3)抗ヒスタミン剤
 4)減感作療法(一般的ではない)

症例
 ラグドール 去勢雄 3歳6か月
 顔・頭部に強い痒みを伴うびらん(ただれ)状の皮膚炎が発生(写真1)。ノミ・ダニ寄生はなく、食事は療法食(泌尿器疾患用)を食べ、環境の変更もなかった。
 食物アレルギーを否定するため、アレルギー対応の療法食(低分子プロテイン、z/d)に変更、同時に猫アレルゲン特異的IgE検査を2つの検査機関で行った。

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経過
 食事での改善は認めず、2社のIgE検査結果では1社は正常、もう1社では3つの抗原(ダニと2種類の花粉)が陽性となり、信ぴょう性に欠ける結果となった。(下の表参照)

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結果
①頭部・頚部のびらん
②外部寄生虫陰性(ノミ・ダニ)
③食物アレルギー陰性
④IgE検査確定できず
 上記4つの結果よりアトピー性皮膚炎と仮診断しステロイド療法を行いました。3週間後の経過がこちら(写真2)。

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 好酸球性肉芽腫群である口唇部の無痛性潰瘍が出現したため、ステロイドの増量か免疫抑制剤への変更を考えました。猫はステロイドに対して低抗生(副作用が少ない)を示しますが、絶対ではありませんため今回は免疫抑制剤(シクロスポリン)による治療に変更しました。経過は良好です。

結論
 猫のアトピー性皮膚炎を確定する診断方法は確立されてなく、症状や他の病気との鑑別の中で決定していきます。
 治療はステロイド(通常は短時間作用のプレドニゾロン)や免疫抑制剤(シクロスポリン)に反応(効果がでる)します。今回の症例は免疫抑制剤で経過が良好になったケースです。
 今後は1日1回の投薬から2日1回、さらに週2回等に減薬できる可能性があります。